法定刑
軽犯罪を犯した場合,1日以上30日未満の拘留または1,000円以上1万円未満の科料に処せられます(軽犯罪法1条)。
なお,軽犯罪行為から1年で時効になります(刑事訴訟法250条2項7号)。
弁護方針
逮捕等回避
軽犯罪の場合,現行犯を除き逮捕・勾留されることはまずないといえますが,万が一の事態に備えるのであれば,早期に弁護士に相談し,自首,逮捕・勾留回避活動,示談などにより,逮捕・報道回避,釈放獲得をより確実なものにすべきです(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
軽犯罪において,被害者が存在する類型の場合,弁護士を介して被害者に謝罪した上,示談成立を目指すことが活動の中心になります(弁護士費用プラン①参照。お知らせ「示談」「情状弁護」も併せてご覧ください)。
一方,被害者が存在しない類型の場合や,被害者が示談を完全に拒否している場合,弁護士を介して贖罪寄付を行うこともあります。
もっとも,後に被害者が翻意し,寄付金に加えて示談金も用意しなければならないリスクもありますので,贖罪寄付を行うかどうかは,慎重に判断しなければなりません。
他に,自首,依存症治療,家族など監督者の存在のアピールなども必要になってきます。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該軽犯罪行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
軽犯罪の場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
軽犯罪法1条
左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
一 人が住んでおらず,且つ,看守していない邸宅,建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
二 正当な理由がなくて刃物,鉄棒その他人の生命を害し,又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
三 正当な理由がなくて合かぎ,のみ,ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
四 生計の途がないのに,働く能力がありながら職業に就く意思を有せず,且つ,一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
五 公共の会堂,劇場,飲食店,ダンスホールその他公共の娯楽場において,入場者に対して,又は汽車,電車,乗合自動車,船舶,飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
六 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し,若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者
七 みだりに船又はいかだを水路に放置し,その他水路の交通を妨げるような行為をした者
八 風水害,地震,火事,交通事故,犯罪の発生その他の変事に際し,正当な理由がなく,現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み,又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかった者
九 相当の注意をしないで,建物,森林その他燃えるような物の附近で火をたき,又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者
十 相当の注意をしないで,銃砲又は火薬類,ボイラーその他の爆発する物を使用し,又はもてあそんだ者
十一 相当の注意をしないで,他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ,注ぎ,又は発射した者
十二 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し,又はその監守を怠ってこれを逃がした者
十三 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ,又は威勢を示して汽車,電車,乗合自動車,船舶その他の公共の乗物,演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち,若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い,若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待っている公衆の列に割り込み,若しくはその列を乱した者
十四 公務員の制止をきかずに,人声,楽器,ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
十五 官公職,位階勲等,学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し,又は資格がないのにかかわらず,法令により定められた制服若しくは勲章,記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者
十六 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
十七 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に,法令により記載すべき氏名,住居,職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
十八 自己の占有する場所内に,老幼,不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら,速やかにこれを公務員に申し出なかった者
十九 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり,ももその他身体の一部をみだりに露出した者
二十一 削除
二十二 こじきをし,又はこじきをさせた者
二十三 正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
二十四 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
二十五 川,みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
二十六 街路又は公園その他公衆の集合する場所で,たんつばを吐き,又は大小便をし,若しくはこれをさせた者
二十七 公共の利益に反してみだりにごみ,鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
二十八 他人の進路に立ちふさがって,若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず,又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者
二十九 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者
三十 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ,又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者
三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者
三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし,若しくは他人の看板,禁札その他の標示物を取り除き,又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
三十四 公衆に対して物を販売し,若しくは頒布し,又は役務を提供するにあたり,人を欺き,又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者
刑事訴訟法250条
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
七 拘留又は科料に当たる罪については1年
刑法16条
拘留は,1日以上30日未満とし,刑事施設に拘置する。
刑法17条
科料は,1,000円以上1万円未満とする。