法定刑
窃盗の罪を犯した場合,1月以上10年以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金に処せられます(刑法235条)。
もっとも,繰り返し窃盗行為に及んでいて,一定の要件を充たす場合,常習特殊窃盗または常習累犯窃盗の罪となり,3年以上20年以下の懲役に処せられます(盗犯等の防止及処分に関する法律2,3条)。
なお,窃盗行為から7年,常習特殊窃盗行為または常習累犯窃盗行為から10年で時効になります(刑事訴訟法250条2項3,4号)。
弁護方針
逮捕等回避
一口に窃盗といっても様々で,万引きや置引きなどで,被害額も数百円から数千円程度と比較的少額に止まる場合,在宅で捜査が行われることも多いといえます。
一方,被害額が数万円以上と多額の場合や,住居等に侵入して金品を持ち去る侵入盗,駅のホーム等で居眠りをしている人から金品を持ち去る仮睡盗などといった悪質な事案の場合,逮捕・勾留される可能性が高くなってきます。
早期に弁護士に相談し,自首も検討しつつ,逮捕・勾留回避活動をしっかり行い,逮捕・報道回避,釈放獲得を目指す必要があります(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」も併せてご覧ください)。
仮に勾留され,起訴されてしまったとしても,弁護士が適切な内容の保釈請求をすれば,保釈が認められる可能性は十分にあります。
示談が成立すれば,その可能性はさらに高まります。
もっとも,被害額が極めて多額であるような悪質な事案の場合,保釈が認められないこともあります。
このような場合,裁判がある程度進んだ時点で,再度保釈にチャレンジすることになります(お知らせ「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
窃盗の場合,弁護士を介して被害者に謝罪した上,示談成立を目指すことが活動の中心になります(弁護士費用プラン①参照)。
初犯で示談が成立しない場合,万引きや置引きであれば,略式罰金に止まる可能性が高いですが,侵入盗や仮睡盗になってくると,いきなり裁判ということも十分にあり得ますので,示談を成立させることがより重要になってきます(お知らせ「示談」「情状弁護」も併せてご覧ください)。
また,被害者が示談を完全に拒否している場合,弁護士を介して贖罪寄付を行うこともあります。
もっとも,後に被害者が翻意し,寄付金に加えて示談金も用意しなければならないリスクもありますので,贖罪寄付を行うかどうかは,慎重に判断しなければなりません。
他に,自首,依存症治療,家族など監督者の存在のアピールなども必要になってきます。
特に,繰り返し窃盗行為に及んでしまっている場合,窃盗症(クレプトマニア)と呼ばれる問題を抱えている可能性が高いので,弁護士が紹介する専門のクリニックで治療を受けなければ,再犯を防止することは難しいといわざるを得ません。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該窃盗行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
窃盗の場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
盗犯等の防止及処分に関する法律2条
常習として左の各号の方法に依り刑法第235条,第236条,第238条若は第239条の罪又は其の未遂罪を犯したる者に対し窃盗を以て論ずべきときは3年以上,強盗を以て論ずべきときは7年以上の有期懲役に処す。
一 兇器を携帯して犯したるとき
二 2人以上現場に於て共同して犯したるとき
三 門戸牆壁等を踰越損壊し又は鎖鑰を開き人の住居又は人の看守する邸宅,建造物若は艦船に侵入して犯したるとき
四 夜間人の住居又は人の看守する邸宅,建造物若は艦船に侵入して犯したるとき
盗犯等の防止及処分に関する法律3条
常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又は其の未遂罪を犯したる者にして其の行為前10年内に此等の罪又は此等の罪と他の罪との併合罪に付3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受け又は其の執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る。
刑事訴訟法250条
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
三 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
四 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
刑法12条
1 懲役は,無期及び有期とし,有期懲役は,1月以上20年以下とする。
刑法15条
罰金は,1万円以上とする。ただし,これを減軽する場合においては,1万円未満に下げることができる。