法定刑
公務執行妨害の罪を犯した場合,1月以上3年以下の懲役もしくは禁錮または1万円以上50万円以下の罰金に処せられます(刑法95条)。
なお,公務執行妨害行為から3年で時効になります(刑事訴訟法250条2項6号)。
弁護方針
逮捕等回避
公務執行妨害の場合,警察官等に抵抗した結果,現行犯逮捕されるケースが散見されます。
逮捕回避のためには,無闇に抵抗しないのが一番ですが,逮捕されてしまったとしても,警察官等が,被疑者の働きかけに応じることは考え難く,証拠隠滅のおそれが類型的に低いといえますので,重傷を負わせるなどしない限り,勾留回避は十分に可能です。
一方,警察官等以外の公務員が相手の場合,警察官等の場合ほど現行犯逮捕されるケースは多くない反面,働きかけの余地がまったくないとまではいえず,逮捕・勾留されてしまう可能性もあります。
早期に弁護士に相談し,自首も検討しつつ,逮捕・勾留回避活動をしっかり行い,逮捕・報道回避,釈放獲得を目指す必要があります(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」も併せてご覧ください)。
仮に勾留され,起訴されてしまったとしても,弁護士が適切な内容の保釈請求をすれば,保釈が認められる可能性は十分にあります。
もっとも,極めて悪質な事案の場合,保釈が認められないこともあります。
このような場合,裁判がある程度進んだ時点で,再度保釈にチャレンジすることになります(お知らせ「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
公務執行妨害の場合,相手が公務員であるだけに,示談を当てにすることは現実的とはいえません。
その分,自首,贖罪寄付,家族など監督者の存在のアピールなどが必要になってきます(お知らせ「情状弁護」も併せてご覧ください)。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該公務執行妨害行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
公務執行妨害の場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
刑法95条
1 公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 公務員に,ある処分をさせ,若しくはさせないため,又はその職を辞させるために,暴行又は脅迫を加えた者も,前項と同様とする。
刑事訴訟法250条
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
六 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
刑法12条
1 懲役は,無期及び有期とし,有期懲役は,1月以上20年以下とする。
刑法13条
1 禁錮は,無期及び有期とし,有期禁錮は,1月以上20年以下とする。
刑法15条
罰金は,1万円以上とする。ただし,これを減軽する場合においては,1万円未満に下げることができる。