法定刑
傷害の罪を犯した場合,1月以上15年以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金に処せられます(刑法204条)。
もっとも,その際に被害者が死亡した場合,傷害致死の罪となり,3年以上20年以下の懲役に処せられ,起訴されると裁判員裁判になります(刑法205条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項2号)。
なお,傷害行為から10年,傷害致死行為から20年で時効になります(刑事訴訟法250条1項2号,2項3号)。
弁護方針
逮捕等回避
傷害の場合,被害者の怪我が重くなればなるほど,逮捕・勾留を回避することが難しくなっていきます。
また,DVのように,被害者との間に密接な関係がある場合,被害者に対する働きかけのおそれが高いとされ,逮捕・勾留されてしまうことも珍しくありません。
早期に弁護士に相談し,自首も検討しつつ,逮捕・勾留回避活動をしっかり行い,逮捕・報道回避,釈放獲得を目指す必要があります(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」も併せてご覧ください)。
仮に勾留され,起訴されてしまったとしても,弁護士が適切な内容の保釈請求をすれば,保釈が認められる可能性は十分にあります。
示談が成立すれば,その可能性はさらに高まります。
もっとも,被害者の怪我が重篤であったり,被害者に対する強い執着が見られたりする場合,保釈が認められないこともあります。
このような場合,裁判がある程度進んだ時点で,再度保釈にチャレンジすることになります(お知らせ「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
傷害の場合,弁護士を介して被害者に謝罪した上,示談成立を目指すことが活動の中心になります(弁護士費用プラン①参照)。
被害者の怪我の程度次第では,莫大な治療費や慰謝料を請求されることもありますが,できる限りの対応をする必要があります(お知らせ「示談」「情状弁護」も併せてご覧ください)。
また,被害者が示談を完全に拒否している場合,弁護士を介して贖罪寄付を行うこともあります。
もっとも,後に被害者が翻意し,寄付金に加えて示談金も用意しなければならないリスクもありますので,贖罪寄付を行うかどうかは,慎重に判断しなければなりません。
他に,自首,依存症治療,家族など監督者の存在のアピールなども必要になってきます。
DVの事案であれば,専門のカウンセリングを受けることが必要ですし,被害者に対する接触禁止など,同じ過ちを繰り返さないための更生環境整備も重要です。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該傷害行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
傷害の場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
もっとも,酒に酔っていて覚えていない,などといった故意否認は,アルコールの呼気検査でよほどの数値が出たり,明らかな異常行動が見られたりしない限り,言い分を信用してもらうことは困難といわざるを得ません。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
刑法204条
人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法205条
身体を傷害し,よって人を死亡させた者は,3年以上の有期懲役に処する。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条
1 地方裁判所は,次に掲げる事件については,次条又は第3条の2の決定があった場合を除き,この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は,裁判所法第26条の規定にかかわらず,裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
二 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
刑事訴訟法250条
1 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
二 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
三 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
刑法12条
1 懲役は,無期及び有期とし,有期懲役は,1月以上20年以下とする。
刑法15条
罰金は,1万円以上とする。ただし,これを減軽する場合においては,1万円未満に下げることができる。