法定刑
児童ポルノを単純所持した場合,1月以上1年以下の懲役または1万円以上100万円以下の罰金に処せられます(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項)。
また,児童ポルノをインターネット上に拡散した場合,1月以上5年以下の懲役もしくは1万円以上500万円以下の罰金またはその併科に処せられます(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条6項)。
他にも,提供・製造・運搬・輸出入など,様々な行為が処罰対象になります(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条)。
なお,単純所持行為から3年,拡散行為から5年で時効になります(刑事訴訟法250条2項5,6号)。
弁護方針
逮捕等回避
児童ポルノの場合,所持している点数が多いほど,内容が悪質なほど,逮捕・勾留される可能性が高くなります。
インターネット上からダウンロードした児童ポルノを数点所持している程度では,逮捕される可能性は低いといえますが,自身が撮影した児童ポルノを数十点所持していたり,それをアップロード等により不特定多数人が閲覧可能な状態に置いたりした場合,逮捕・勾留を回避することは困難です。
早期に弁護士に相談し,自首も検討しつつ,逮捕・勾留回避活動をしっかり行い,逮捕・報道回避,釈放獲得を目指す必要があります(お知らせ「刑事事件の報道や勤務先・学校への露呈の回避」も併せてご覧ください)。
仮に勾留され,起訴されてしまったとしても,弁護士が適切な内容の保釈請求をすれば,保釈が認められる可能性は十分にあります。
もっとも,児童ポルノの売買を業としてやっているような悪質な事案の場合,保釈が認められないこともあります。
このような場合,裁判がある程度進んだ時点で,再度保釈にチャレンジすることになります(お知らせ「勾留と保釈」も併せてご覧ください)。
認め事件
児童ポルノの場合,その拡散を社会的に許してはならないという理由から犯罪とされているため,弁護士を介して贖罪寄付を行うことが考えられます。
もっとも,児童ポルノの被写体が特定されており,同人が児童ポルノの拡散により強いショックや不快感を覚えているような場合,その精神的苦痛を無視することはできませんので,弁護士を介して児童やその保護者に謝罪した上,示談成立を目指すことになります(弁護士費用プラン①参照。お知らせ「示談」「情状弁護」も併せてご覧ください)。
他に,自首,依存症治療,家族など監督者の存在のアピールなども必要になってきます。
特に,繰り返し児童ポルノ犯罪行為に及んでしまっている場合,弁護士が紹介する専門のクリニックで性依存症治療を受けなければ,再犯を防止することは難しいといわざるを得ません。
また,弁護士が行為の態様・結果・動機といった基本的な部分もきちんとチェックし,当該児童ポルノ犯罪行為が同種事案の中で特に悪質とまではいえないと主張できるような要素を,漏れなく拾い上げる必要もあります(お知らせ「行為責任主義」も併せてご覧ください)。
否認事件
児童ポルノの場合,捜査段階では,弁護士が頻繁に接見するなどして取調べ等の捜査状況を把握すると共に,終局処分の見通しを早期に把握することが必要不可欠です。
弁護士の見極め次第では,嫌疑不十分を狙うことも十分にあり得るところです。
被疑者自身は,黙秘権行使を原則とし,あえて積極的に供述していくときは,弁護士と相談しながら慎重に行っていく必要があります。
裁判段階では,まず弁護士が検察官証拠を吟味し,その上で網羅的な証拠開示請求を行って開示証拠を精査し,弁護士と被告人が綿密に協議しながら,検察官立証の要を崩す方策を見つけ出す必要があります。
要となる検察官証拠に対する証拠意見はすべて不同意として,証人の証言の不合理な部分を反対尋問で徹底的に弾劾したり,被告人に有利な証拠を積極的に収集・提出したり,被告人は無罪であることを弁論で強力かつ説得的に論じたりするなど,事案に応じ様々な手を打っていくことになります。
関連条文
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条
3 この法律において「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって,次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条
1 自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で,第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も,同様とする。
2 児童ポルノを提供した者は,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も,同様とする。
3 前項に掲げる行為の目的で,児童ポルノを製造し,所持し,運搬し,本邦に輸入し,又は本邦から輸出した者も,同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で,同項の電磁的記録を保管した者も,同様とする。
4 前項に規定するもののほか,児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造した者も,第2項と同様とする。
5 前2項に規定するもののほか,ひそかに第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造した者も,第2項と同様とする。
6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し,又は公然と陳列した者は,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も,同様とする。
7 前項に掲げる行為の目的で,児童ポルノを製造し,所持し,運搬し,本邦に輸入し,又は本邦から輸出した者も,同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で,同項の電磁的記録を保管した者も,同様とする。
8 第6項に掲げる行為の目的で,児童ポルノを外国に輸入し,又は外国から輸出した日本国民も,同項と同様とする。
刑事訴訟法250条
2 時効は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については,次に掲げる期間を経過することによって完成する。
五 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
六 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
刑法12条
1 懲役は,無期及び有期とし,有期懲役は,1月以上20年以下とする。
刑法15条
罰金は,1万円以上とする。ただし,これを減軽する場合においては,1万円未満に下げることができる。