通信傍受法3条
1 検察官又は司法警察員は,次の各号のいずれかに該当する場合において,当該各号に規定する犯罪(第二号及び第三号にあっては,その一連の犯罪をいう。)の実行,準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議,指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信(以下この項において「犯罪関連通信」という。)が行われると疑うに足りる状況があり,かつ,他の方法によっては,犯人を特定し,又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるときは,裁判官の発する傍受令状により,電話番号その他発信元又は発信先を識別するための番号又は符号(以下「電話番号等」という。)によって特定された通信の手段(以下「通信手段」という。)であって,被疑者が通信事業者等との間の契約に基づいて使用しているもの(犯人による犯罪関連通信に用いられる疑いがないと認められるものを除く。)又は犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるものについて,これを用いて行われた犯罪関連通信の傍受をすることができる。
一 別表第1又は別表第2に掲げる罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由がある場合において,当該犯罪が数人の共謀によるもの(別表第2に掲げる罪にあっては,当該罪に当たる行為が,あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限る。次号及び第三号において同じ。)であると疑うに足りる状況があるとき。
二 別表第1又は別表第2に掲げる罪が犯され,かつ,引き続き次に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において,これらの犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。
イ 当該犯罪と同様の態様で犯されるこれと同一又は同種の別表第1又は別表第2に掲げる罪
ロ 当該犯罪の実行を含む一連の犯行の計画に基づいて犯される別表第1又は別表第2に掲げる罪
三 死刑又は無期若しくは長期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪が別表第1又は別表第2に掲げる罪と一体のものとしてその実行に必要な準備のために犯され,かつ,引き続き当該別表第1又は別表第2に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において,当該犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。
2 別表第1に掲げる罪であって,譲渡し,譲受け,貸付け,借受け又は交付の行為を罰するものについては,前項の規定にかかわらず,数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があることを要しない。
3 前2項の規定による傍受は,通信事業者等の看守する場所で行う場合を除き,人の住居又は人の看守する邸宅,建造物若しくは船舶内においては,これをすることができない。ただし,住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者の承諾がある場合は,この限りでない。
別表第1
一 大麻取締法(略)第24条(栽培,輸入等)又は第24条の2(所持,譲渡し等)の罪
二 覚せい剤取締法(略)第41条(輸入等)若しくは第41条の2(所持,譲渡し等)の罪,同法第41条の3第1項第三号(覚せい剤原料の輸入等)若しくは第四号(覚せい剤原料の製造)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第2項(営利目的の覚せい剤原料の輸入等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は同法第41条の4第1項第三号(覚せい剤原料の所持)若しくは第四号(覚せい剤原料の譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪に係る同条第2項(営利目的の覚せい剤原料の所持,譲渡し等)の罪若しくはこれらの罪の未遂罪
三 出入国管理及び難民認定法(略)第74条(集団密航者を不法入国させる行為等),第74条の2(集団密航者の輸送)又は第74条の4(集団密航者の収受等)の罪
四 麻薬及び向精神薬取締法(略)第64条(ジアセチルモルヒネ等の輸入等),第64条の2(ジアセチルモルヒネ等の譲渡し,所持等),第65条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等),第66条(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の譲渡し,所持等),第66条の3(向精神薬の輸入等)又は第66条の4(向精神薬の譲渡し等)の罪
五 武器等製造法(略)第31条(銃砲の無許可製造),第31条の2(銃砲弾の無許可製造)又は第31条の3第一号(銃砲及び銃砲弾以外の武器の無許可製造)の罪
六 あへん法(略)第51条(けしの栽培,あへんの輸入等)又は第52条(あへん等の譲渡し,所持等)の罪
七 銃砲刀剣類所持等取締法(略)第31条から第31条の4まで(けん銃等の発射,輸入,所持,譲渡し等),第31条の7から第31条の9まで(けん銃実包の輸入,所持,譲渡し等),第31条の11第1項第二号(けん銃部品の輸入)若しくは第2項(未遂罪)又は第31条の16第1項第二号(けん銃部品の所持)若しくは第三号(けん銃部品の譲渡し等)若しくは第2項(未遂罪)の罪
八 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(略)第5条(業として行う不法輸入等)の罪
九 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(略)第3条第1項第七号に掲げる罪に係る同条(組織的な殺人)の罪又はその未遂罪
別表第2
一 爆発物取締罰則(略)第1条(爆発物の使用)又は第2条(使用の未遂)の罪
二
イ 刑法(略)第108条(現住建造物等放火)の罪又はその未遂罪
ロ 刑法第199条(殺人)の罪又はその未遂罪
ハ 刑法第204条(傷害)又は第205条(傷害致死)の罪
ニ 刑法第220条(逮捕及び監禁)又は第221条(逮捕等致死傷)の罪
ホ 刑法第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等,未遂罪)の罪
ヘ 刑法第235条(窃盗),第236条第1項(強盗)若しくは第240条(強盗致死傷)の罪又はこれらの罪の未遂罪
ト 刑法第246条第1項(詐欺),第246条の2(電子計算機使用詐欺)若しくは第249条第1項(恐喝)の罪又はこれらの罪の未遂罪
三 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(略)第7条第6項(児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等)又は第7項(不特定又は多数の者に対する提供等の目的による児童ポルノの製造等)の罪
別表第2という形で,通信傍受の対象犯罪が大幅に拡大されました。
「別表第2に掲げる罪にあっては,当該罪に当たる行為が,あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限る」との限定はあるものの,ごく一般的な刑法犯も通信傍受の対象となり得ることになり,近時成立した共謀罪と相まって,監視国家の招来が大いに懸念されるところです。
裁判官による令状審査,弁護士による証拠の吟味がより一層重要になりますし,今後の法改正による更なる対象拡大にも,十分に警戒する必要があるように思われます。(末原)
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