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判例考察12(最二決平27.2.3)

被告人Xが,強盗目的でマンションに侵入し,寝ていた被害者Aを発見するや,殺害して金品を強奪することを決意し,包丁で刺殺したという事案と,被告人Yが,マンションに侵入し,帰宅した被害者Bから金品を強取した上,包丁で刺殺し,翌日犯跡隠蔽のため再度侵入し,死体付近に火を放った住居侵入・強盗殺人及び建造物侵入・現住建造物等放火・死体損壊等のほか,前後約2か月間の間に,女性5名に対する強盗致傷,強盗強姦等を敢行したという事案で,第一審はいずれも死刑,控訴審はいずれも無期懲役としたのに対し,最高裁は,「刑罰権の行使は,国家統治権の作用により強制的に被告人の法益を剥奪するものであり,その中でも,死刑は,懲役,禁錮,罰金等の他の刑罰とは異なり被告人の生命そのものを永遠に奪い去るという点で,あらゆる刑罰のうちで最も冷厳で誠にやむを得ない場合に行われる究極の刑罰であるから,昭和58年判決〔永山判決〕で判示され,その後も当裁判所の同種の判示が重ねられているとおり,その適用は慎重に行われなければならない。また,元来,裁判の結果が何人にも公平であるべきであるということは,裁判の営みそのものに内在する本質的な要請であるところ,前記のように他の刑罰とは異なる究極の刑罰である死刑の適用に当たっては,公平性の確保にも十分に意を払わなければならないものである。もとより,量刑に当たり考慮すべき情状やその重みは事案ごとに異なるから,先例との詳細な事例比較を行うことは意味がないし,相当でもない。しかし,前記のとおり,死刑が究極の刑罰であり,その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点からすると,同様の観点で慎重な検討を行った結果である裁判例の集積から死刑の選択上考慮されるべき要素及び各要素に与えられた重みの程度・根拠を検討しておくこと,また,評議に際しては,その検討結果を裁判体の共通認識とし,それを出発点として議論することが不可欠である。このことは,裁判官のみで構成される合議体によって行われる裁判であろうと,裁判員の参加する合議体によって行われる裁判であろうと,変わるものではない。そして,評議の中では,前記のような裁判例の集積から見いだされる考慮要素として,犯行の罪質,動機,計画性,態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等が取り上げられることとなろうが,結論を出すに当たっては,各要素に与えられた重みの程度・根拠を踏まえて,総合的な評価を行い,死刑を選択することが真にやむを得ないと認められるかどうかについて,前記の慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点をも踏まえて議論を深める必要がある。その上で,死刑の科刑が是認されるためには,死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的,説得的な根拠が示される必要があり,控訴審は,第1審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査すべきである」とした上,各事件の内容に即した検討を加えた結果,いずれについても上告を棄却しました。

裁判員裁判において死刑判決が積み重なってくると,最高裁の考え方にも徐々に影響が出てき得る一方で,国際的には死刑廃止の潮流があり,日本はどの方向に進んでいくべきなのか,非常に難しい問題といえます。(末原)

 
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