被告人が,県職員である被害者の胸倉を掴む暴行を加えたという公務執行妨害の事案で,被害者及び目撃者に被害状況及び目撃状況を動作等を交えて再現させ,その様子を順次撮影し,その写真を撮影状況や指示内容に関する説明とともに添付した捜査状況報告書2通(以下,「本件各書証」という。)が,第一審において,刑訴法321条3項によって採用されたところ,控訴審が,「原審の証拠採用及び証拠の標目の項の記載からすれば,本件各書証は…被害状況及び目撃状況それ自体を立証する趣旨のものではなく,それらの状況自体は別途証人尋問において立証を求め,それらの状況が立証された際にその状況をより理解しやすくするための資料として…採用されたものと認められる」として,第一審の判断を是認したのに対し,最高裁は,「捜査状況報告書…は,警察官が被害者及び目撃者に被害状況あるいは目撃状況を動作等を交えて再現させた結果を記録したものと認められ,実質においては,被害者や目撃者が再現したとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものであって,原判決が,刑訴法321条1項3号所定の要件を満たさないのに同法321条3項のみにより採用して取り調べた第1審の措置を是認した点は,違法であるが,その違法は原判決の結論に影響を及ぼすものではない」として,控訴審の判断を否定しました(結論としては上告棄却)。
最決平17.9.27の事案との差異を考慮に入れても,最高裁の判断は当然ですし,第一審や控訴審による証拠判断や,検察官による証拠請求や証人尋問のあり方は,直接主義・口頭主義を重視する近年の潮流にそぐわないものであったように思います。(末原)
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