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新法考察3(証拠開示制度の拡充【施行済】)

刑事訴訟法316条の2

1 裁判所は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で,第1回公判期日前に,決定で,事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として,事件を公判前整理手続に付することができる。

2 前項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには,裁判所の規則の定めるところにより,あらかじめ,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

3 公判前整理手続は,この款に定めるところにより,訴訟関係人を出頭させて陳述させ,又は訴訟関係人に書面を提出させる方法により,行うものとする。

刑事訴訟法316条の14

1 検察官は,前条第2項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については,速やかに,被告人又は弁護人に対し,次の各号に掲げる証拠の区分に応じ,当該各号に定める方法による開示をしなければならない。

一 証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては,閲覧し,かつ,謄写する機会)を与えること。

二 証人,鑑定人,通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え,かつ,その者の供述録取書等のうち,その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき,又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあっては,その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては,閲覧し,かつ,謄写する機会)を与えること。

2 検察官は,前項の規定による証拠の開示をした後,被告人又は弁護人から請求があったときは,速やかに,被告人又は弁護人に対し,検察官が保管する証拠の一覧表の交付をしなければならない。

3 前項の一覧表には,次の各号に掲げる証拠の区分に応じ,証拠ごとに,当該各号に定める事項を記載しなければならない。

一 証拠物 品名及び数量

二 供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるもの 当該書面の標目,作成の年月日及び供述者の氏名

三 証拠書類(前号に掲げるものを除く。) 当該証拠書類の標目,作成の年月日及び作成者の氏名

4 前項の規定にかかわらず,検察官は,同項の規定により第2項の一覧表に記載すべき事項であって,これを記載することにより次に掲げるおそれがあると認めるものは,同項の一覧表に記載しないことができる。

一 人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ

二 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ

三 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障を生ずるおそれ

5 検察官は,第2項の規定により一覧表の交付をした後,証拠を新たに保管するに至ったときは,速やかに,被告人又は弁護人に対し,当該新たに保管するに至った証拠の一覧表の交付をしなければならない。この場合においては,前2項の規定を準用する。

刑事訴訟法316条の15

1 検察官は,前条第1項の規定による開示をした証拠以外の証拠であって,次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し,かつ,特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて,被告人又は弁護人から開示の請求があった場合において,その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し,相当と認めるときは,速やかに,同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において,検察官は,必要と認めるときは,開示の時期若しくは方法を指定し,又は条件を付することができる。

一 証拠物

二 第321条第2項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面

三 第321条第3項に規定する書面又はこれに準ずる書面

四 第321条第4項に規定する書面又はこれに準ずる書面

五 次に掲げる者の供述録取書等

イ 検察官が証人として尋問を請求した者

ロ 検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であって,当該供述録取書等が第326条の同意がされない場合には,検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの

六 前号に掲げるもののほか,被告人以外の者の供述録取書等であって,検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの

七 被告人の供述録取書等

八 取調べ状況の記録に関する準則に基づき,検察官,検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって,身体の拘束を受けている者の取調べに関し,その年月日,時間,場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であって第五号イ若しくはロに掲げるものに係るものに限る。)

九 検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面(押収手続の記録に関する準則に基づき,検察官,検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって,証拠物の押収に関し,その押収者,押収の年月日,押収場所その他の押収の状況を記録したものをいう。次項及び第3項第二号イにおいて同じ。)

2 前項の規定による開示をすべき証拠物の押収手続記録書面(前条第1項又は前項の規定による開示をしたものを除く。)について,被告人又は弁護人から開示の請求があった場合において,当該証拠物により特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し,相当と認めるときも,同項と同様とする。

3 被告人又は弁護人は,前2項の開示の請求をするときは,次の各号に掲げる開示の請求の区分に応じ,当該各号に定める事項を明らかにしなければならない。

一 第1項の開示の請求 次に掲げる事項

イ 第1項各号に掲げる証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項

ロ 事案の内容,特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実,開示の請求に係る証拠と当該検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし,当該開示の請求に係る証拠が当該検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であることその他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

二 前項の開示の請求 次に掲げる事項

イ 開示の請求に係る押収手続記録書面を識別するに足りる事項

ロ 第1項の規定による開示をすべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし,当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示が必要である理由

 

公判前整理手続等について,検察官・被告人・弁護人に請求権が付与されました。証拠一覧表の交付が受けられるなどのメリットがある反面,裁判所により審理充実よりも審理促進が強調されがちなどのデメリットもあるので,請求権を行使すべきか否かは,事案ごとに慎重に判断する必要があります。

一覧表についても,未送致の証拠は対象外であること,記載されているのは証拠の標目だけであること,一定の要件を充たせば不記載とされる証拠もあることなど,いくつか注意しなければならない点があるので,これに頼り過ぎるのは危険といえます。

押収手続記録書面など,新たに開示対象となった類型証拠は,従前から任意証拠開示請求により入手可能であったものが多く,弁護士の手元に届く証拠が顕著に増えるとまでは言い難いところですが,類型証拠開示の対象が拡大されたことは,基本的には歓迎すべきことといえます。

弁護士としては,新制度の下にあっても,従前どおり,任意証拠開示に頼り過ぎることなく,類型・主張関連証拠開示請求を網羅的に行い,開示漏れを防止すべく万全を期すことが肝要といえます。(末原)

 
対応地域
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