裁判員裁判とは,起訴された事件のうち,殺人や現住建造物等放火など,一定の重大犯罪に限り,従来の裁判官3名に,一般市民から選出された裁判員6名を加えた9名で審理を行い,判決を下す裁判のことです。
起訴されてから裁判が行われるまで数か月を要する反面,一度裁判が始まってしまえば,1週間以内に判決まで進むことも多い点が,通常裁判と大きく異なる点です。
種別としては,強盗致死傷・強制性交等致死傷・強制わいせつ致死傷・傷害致死・覚せい剤営利目的輸入などが多くなっております。
裁判員裁判も,あくまで日本の刑事裁判の一種に過ぎず,弁護士としてすべきことが大きく異なるわけではありません。
被告人にとって有利な事情を主張立証していくという弁護活動の中核は,どのような裁判手続であっても不変のものです。
もっとも,従来の裁判とまったく同じようにやっていたのでは,話にならないこともまた確かです。
裁判員は,法律に関しては素人であり,弁護士や検察官が難解な法律用語を並べ立てたのでは,審理の内容をまったく理解できないまま終わってしまいます。
そうすると,裁判員は,評議において裁判官に言われるがままになってしまい,せっかく裁判員裁判が行われている意味がまったく失われてしまいます。
ですので,弁護士は,裁判員が容易に内容を理解できるよう,徹底的に分かりやすくした形で主張立証を行う必要があり,そのための様々な工夫が要求されます。
裁判員の素朴な法感情に直接訴えかけることができれば,裁判員が評議において多数派を形成し,逆に裁判官を説得していくことも十分に期待できますし,それでこそ,裁判員裁判における弁護活動といえます。
また,裁判員にも理解可能な裁判を実現すべく,弁護士・検察官・裁判官には,入念な事前準備が要求されます。
公判前整理手続という事前準備のための手続が必ず行われるなど,通常裁判ではほとんどない形で裁判までの手続が進行していきますので,弁護士には十分な経験値が要求されることになります。