被告人や共犯者が経営する会社が,被害会社から2億3000万円余りを騙し取ったとされる事案で,最高裁は,「原決定は,これまでの公判審理の経過及び罪証隠滅のおそれの程度を勘案してなされたとみられる原々審の判断が不合理であることを具体的に示していない。本件の審理経過等に鑑みると,保証金額を300万円とし,共犯者その他の関係者との接触禁止等の条件を付した上で被告人の保釈を許可した原々審の判断が不合理であるとはいえない」として,東京地裁の保釈許可決定を取り消して保釈請求を却下した東京高裁の決定を取り消し,保釈許可決定を確定させました。
また,予備校の理事が,予備校生徒に対し,準強制わいせつをしたとされる事案で,最高裁は,「原々審は,既に検察官立証の中核となる被害者の証人尋問が終了していることに加え,受訴裁判所として,当該証人尋問を含む審理を現に担当した結果を踏まえて,被告人による罪証隠滅行為の可能性,実効性の程度を具体的に考慮した上で,現時点では,上記元生徒らとの通謀の点も含め,被告人による罪証隠滅のおそれはそれほど高度のものとはいえないと判断したものである。それに加えて,被告人を保釈する必要性や,被告人に前科がないこと,逃亡のおそれが高いとはいえないことなども勘案し,上記の条件を付した上で裁量保釈を許可した原々審の判断は不合理なものとはいえず,原決定は,原々審の判断が不合理であることを具体的に示していない」として,福井地裁の保釈許可決定を取り消して保釈請求を却下した名古屋高裁金沢支部の決定を取り消し,保釈許可決定を確定させました。
上記各決定の射程がどこまで及ぶのかという問題はありますが,たとえ否認事件であっても,罪証隠滅の現実的可能性がないことについて,審理を担当している裁判所を説得できれば,その保釈許可決定を上級審が覆すおそれは低くなったといえ,ひいては,裁判所が裁量保釈に踏み切る余地が大きくなったといえるのではないかと思います。(末原)
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